8月の米国の非農業部門雇用者数は、過去7カ月で最も少ない増加にとどまりました。市場予想も大幅に下回り、景気の停滞を感じさせ、米金融当局が年内に緩和策縮小(テーパリング)を開始するかどうかの判断を難しくさせる内容でした。
雇用面での明るいニュース
コロナウイルスのパンデミックが米国経済に大きな打撃を与え、何百万人もの米国人が失業し、失業手当を受給することになったのは周知の事実です。最近では、パンデミック発生当初に比べて経済状況は悪化していませんが、本格的な回復にはまだ時間がかかりそうです。
しかし、経済が正常な状態に戻るためには、雇用を創出する必要があります。その点、民間企業には明るい兆しが見えています。
最新のADP全国雇用報告書によると、8月の民間企業の新規雇用者数は37万4,000人で、7月の33万人から増加しました。このまま民間企業の雇用が増え続ければ、2021年末には経済がさらに好転している可能性があります。
最も雇用を増やした企業は?
8月の雇用創出の内訳は以下のとおりです。
従業員数1〜49人の小規模企業で8万6,000件の雇用を創出。
従業員数50〜499人の中規模企業では、14万9,000件の雇用を創出。
従業員数500人以上の大企業では、13万8,000人の雇用を創出。
一方、サービス業では32万9,000人の雇用が増加しました。その中でも、レジャー・ホスピタリティ部門では、201,000人が新たに雇用され、最も雇用が増加しました。
しかし、パンデミックの際に最も大きな被害を受けたのがレジャー・ホスピタリティ産業であることに留意する必要があります。パンデミックの初期には、レストランやエンターテイメント施設が一時的に閉鎖され、多くの雇用が失われました。そして今、2020年の春に失われた仕事を補うために、追加された仕事があることを示しています。
8月の民間部門の雇用増加率が7月に比べて改善したことは、経済にとってポジティブなことです。俯瞰で全体の景気の先行きを見つつ、その中でも光る業界の存在を見つけることで、堅実な資産運用につなげていきたいところです。